2024年6月18日火曜日

「誰のためのデザインか?」トークイベントから考えたこと

 

先日、熊本・PSオランジュリで開催されたトークイベントにお誘いいただき、聴講に伺いました。

“誰のためのデザインか?”をテーマに、絶滅危惧種動物の飼育環境専門家である本田ハビタットデザイン(株)の本田氏、福井で在宅医療から医療に従事されるスタッフにむけたスペースデザインまでをされる紅谷先生、そして札幌市立大学で都市環境デザインを研究されている斎藤教授のそれぞれのお話からトークセッションまで、大変に楽しませていただきました。

このトークを通じて、社会福祉とは誰のためにデザインするものなのか?を考えていました。私たちは、社会福祉法人として“社会的弱者”(ここではあくまで利用者様や園児の皆さまを“社会的弱者”と表現させていただきます)が安心して過ごすことのできるための環境設定、支援を日々心掛けます。でも、その施設・スペースが“社会的弱者”にとっては良いと思っても、“社会的弱者”では無い方にとっては居心地の良いものなのか、そして“社会的弱者”にとっても本当に居心地の良い環境となっているのかという疑問があります。そして、トークの中でも話されていましたが、どこまでを“社会的弱者”として線引きするべきなのか?という議論もあります。そういう意味では、この“多様性”の時代にあって、“福祉施設”は同じような年齢・障がい・介護区分の方を社会から線引きしている状況です。

一方、“福祉”という言葉を解釈すると「幸福」ということであり、近年では“well-being”などとも訳されますが、“well-being”はWHOによれば「心身が健康で、社会的にも満たされた状態」という意味となります。つまり、“福祉”は“社会的弱者”のものではなく、関わりある人皆の幸福のためのものということです。であれば、もっと社会福祉というのは門戸を開いてフラットな状態で、関わる人が楽しく、幸せと感じるようなものをデザインしていくべきなのでは、と思うのです。ここで未来の社会福祉法人が誰のためのデザインをすべきか?という対象が見えてきました。

 

では、どのようにデザインをすべきかという議論に移っていくのですが、とても大切なキーワードをトークの中から受け取りました。“ARTSSCIENCE”、“アートとサイエンス”の視点です。サイエンスが人の意識に関わる部分(言葉、数値等)であるならばアートは無意識にかかわる全体的、身体的な部分となります。本田氏は、希少動物の環境デザインを環境曼荼羅に落とし込まれており、サイエンスではあるものの、曼荼羅とすることでアートな捉え方ができる、とても面白い表現をされていました。社会福祉は、今までサービス制度に沿ったかたちの建物を建ててきましたが、それはどちらかというと“サイエンス”に近かったのかもしれません。将来的には“アート”の部分を持ち合わせ、人が心地よく、楽しく、エネルギーのでるような環境づくりというものを社会福祉も担っていくべきなのだと感じました。

 

5月にオープニングイベントを開催した新しいスペースの[ちまのいすんて]では、社会福祉の“アート”の部分を担っていくべきだと考えています。7月より、[ちまのいすんて]本格始動いたします、どうぞよろしくお願い致します。